「あなたの人生、片づけます」、垣谷美雨著書、2013年発表。
垣谷美雨さんは、2021年公開予定の邦画「老後の資金がありません」の原作者です。
「老後の資金がありません」の初出が2015年なので、それより2年前に発表された作品。
「あなたの人生、片づけます」も「老後の資金がありません」もどちらも、カラッとしたテンポ良いコメディ小説です。
片づけられないのは心の問題
ケース１からケース４までのオムニバス形式の短編集です。
問題提起があって、凄腕の片付けアドバイサー大庭十万里が解決へ導くその過程がテンポよく語られます。
不倫から抜け出せないOL、妻に先立たれた老人、資産家なのに子供家族から疎遠になっている老女、何にも関心がなく正気のない家庭の主婦。
部屋が片づいていないことで、心の闇がそのまま表れているケースもあれば、一見問題ないように見えて、後から後から古い物たちを抱え込んでいるのが判明したりする。
１編を読み終わるたび、老若男女、溜め込んでいるものの根っこは、何かに対する執着の表れ、と突きつけられるようです。
認めることが難しい執着心
側（はた）から見ると問題解決は簡単そうに見えます。
過去は過去、今は今、辛いことは辛い、と認めて次に進みましょうというのは簡単。
当事者は、気がついていても踏み出せない、過去があまりに愛おしすぎて。
身近な家族はその当事者の気持ちがわかるから、片づけ屋、大庭十万里に依頼する。
クライアントを闇の中から救い出してください、と。
やさしすぎる身近なひとたち
その執着を手放しなさい、と言えない家族にもそれぞれの事情があるものの、当事者に現実を突きつけられないのは、そこに相手を思いやるやさしさがあるから。
垣谷さんの小説に出てくる人物はみんなやさしい。
私だったら、強引にことを進めて、結果良ければ全てよし、で先を急ぐと思うけれど、それではきっとあとあと遺恨が残る。
強引な手法で決着をつけた私の過去を振り返って、当時、みんなに許してもらってたんだなあとしみじみします。
「あなたの人生片づけます」は軽いコメディタッチで綴られる、読者に対する「毎日を大事に生きていますか？」というメッセージのようだと感じました。
高級座布団売れない！ってくだりがあるんですけど、売れるよ！メルカリで！と思わず心で叫んじゃった（笑）
メルカリで売れてうれしかったもの、それは座布団（2021年4月16日投稿）
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